お客様インタビュー
2019.04.11
【完成見学会レポ】5m超の土間、富士山viewのリビング、南向き家事室、大型WIC…全て叶えた間取術/74.37㎡
今日は、完成見学会にお邪魔しました。この完成見学会というのは、入居前までの限られた期間にのみ見学が可能で、入居されるともう見学できないという貴重な機会。
今回お邪魔したのは、最寄りの駅から徒歩17分の物件。駅からの距離は少しあるものの、最上階の南西角地で、2面採光、周囲に高い建物もなく、晴れた日には富士山も望めるという、条件に恵まれたお家。
デザイナーは「①建物ポテンシャル、②外的要因、③内的要因の3点を大切にして設計しています。」と言います。
土間、WICだけでなくパントリーや小上がりもデザインされ、さらには生活導線まで計算された間取術とは?一体どんなリノベーションなのか、見せて頂きました。
目次
【間取図 Before/After】座ると、空しか見えない、抜けたviewをリビングに
左:Before / 右:After
南西角地の2面採光で、もとのリビングは南窓に面していました。しかし、眺望はごく普通の町view。
一方、西側の窓側には、視界を遮る建物がなく、どこまでも抜けた富士山view。
その特性を活かすべく、リビングの位置を西面へガラリと変えることになったそうです。
懸念として、西側の場合夏の時期に夕日が入ります。でもそれは夕方だけと考えれば、その期間はカーテンなどでコントロールすることとし、1年を通して長い期間富士山viewを楽しむという選択ができます。
富士見酒を楽しむ縁側
そのようにデザインされた、リビング続きの小上がりは、腰を掛けるのに丁度良い高さ。
「縁側のように腰をかけ、富士山を眺めながらお茶やお酒を楽しみたい」という施主さんの想いが形になった場所でもありました。
デザイナーに聞くと、この小上がりの高さにも実はポイントがあって、居室として認定される天井高2100mmを確保しているとのこと。居室かどうかで、物件の価値にも影響するということ。機能とデザインのバランスが絶妙な小上がりです。
小上がりは将来子ども部屋にも
その、小上がりは引き戸で個室にもなり、将来の子ども部屋としても想定されています。「オープンな子育て」というコンセプトで、モールガラスの扉を採用し、閉じすぎず、できる限りの可能性を残したデザインを狙ったそうです。
こちらの物件は、このように細部にも全て意味があるようで、一つ一つが心地よく感じられます。
次に、この物件のもう一つの特徴である空間の使い方について紐解いてみたいと思います。
空間の仕掛け①~外廊下の景色を取り込む~
外廊下の壁が、赤みがかったレンガ調のこのマンション。ドアを開けると、5m超の土間が広がります。
こだわりの土間は、モルタルにしてコストカットする選択肢もあったそうですが、"イタリア・トリノのお城を紡いだような"というストーリーが描かれ、このタイルが選ばれたそうです。
そして途中のアーチを抜けていくと…
奥の壁には、外廊下のタイルとリンクするような、同系のタイルが施されています。
外のような中のような、外の景色も取り込んでしまうような、
外のパブリック空間から徐々に、中のプライベート空間へ誘うデザインです。
このライトは、一般的なダウンライトでなく、演色性のため壁を照らすWW(ウォールウオッシャ)というものを採用したそうです。
空間の仕掛け②~パブリックからプライベートへの…~
例えば、リビングというパブリック側からプライベート空間である寝室に行くのに、ドアを開けたらすぐというのではなく、一歩、前室的な途中の間があって、それを経由してから寝室に入るという、ここでも徐々に徐々にプライベートな空間に誘われるような仕掛けがありました。
その前室の役割となるところが、実は約3帖ほどもあるWICでもありました。
機能をシェアする空間が、この物件の隠れたポイントかもしません。
さらに、バルコニーと室内の間に半屋外としてのインナーバルコニーが設けられていました。
空間は共有しつつ、素材で仕切って外のような中のような、どちらともなるシームレスな空間です。
空間の仕掛け③~リビングを通過しない、洗濯導線~
パブリックとプライベートを分けてゾーニングされたこの物件の中で、この洗濯導線はひときわ魅力的でした。
「洗濯物を持ってリビングを横切らない」ように、導線が設計されているのです。南面のバルコニーに外干しがあり、洗面所の洗濯機から室内干し→外干し→WICまで全てがプライベート空間で完結できるというものでした。
室内の物干しもまた、ショップにあるようなデザイン性の高いパイプスタイルのものが、採用されていました。
デザインは、機能性とコストと意匠性のトータルコーディネート
デザインと一口にいっても、内容は様々。今回設計したデザイナーは、意匠性だけでなく機能性とコストも含めたトータルのことをデザインと捉えていると語ってくれました。
例えば、この電球は、玄関からリビングドアを開けたところ。
写真にするとドアホンにも気が付きますが、実際に見ると、電球のぽわんとした明かりに意識がうばわれて、ドアホンの存在が気にならないという体験をしました。
これも意図してデザインされたそうです。
同じ素材で、高さが揃えられた棚は、シンプルで美しくもありました。
長手方向に壁一面にラインが入ると、より一層距離感が出て、広がりを感じます。
ドアは、パブリック⇔プライベートの場所にはテーマカラーのネイビーブルー、プライベートとして目立たせたくない場所にはホワイトのドアが採用されていました。
このネイビーブルーは、空間に奥行きが感じられるそうです。
プライベートな空間は、思いっきり遊ぶ
パブリックなリビングとは異なり、プライベートなこの空間には、個性的な柄の床材を選択しています。
柄物でありながら、色味が洗面室のホワイト&ブラック&ナチュラルウッドの3色に統一され、洗練された印象です。
浴室はもともと、窓がない玄関側に位置していました。フルリノベーションで浴室、洗面室もこちらに移動。南向の出窓があり、明るいくて広い(約3.9帖)洗面室と、マンション特有の湿気からも解放される間取りとなっていました。
キッチンにもパブリック⇔プライベート
パントリーが当初からの要望だったそう。生活感を醸し出す冷蔵庫もパントリーに収納できる設計で、ここでも、パブリック⇔プライベートを分けた構成で、キッチン空間がスッキリした印象に。
設備にもこだわり、IHコンロと、オシャレな人が必ずと言っていいほど選ぶSUSバイブレーション仕上げの天板を採用したということでした。 SUSバイブレーション仕上げは、傷が目立ちにくく、ヘアライン仕上げに比べ光沢を抑えられ落ち着いた印象を得られるのが特徴だからだそうです。
CD(コストダウン)と、VE(Value Engineering)
CDは「単純にグレードを下げて価格を下げるもの」であり、VEは「価値は保ちつつ、減額できるものを減額すること」だと言います。
デザイナーは、この物件でも厳しい場面に出くわす中で、価値を保てることを前提として設計してきたと語ってくれました。
そして、まさに玄関土間のタイルは減額対象となりました。タイルではなく、モルタルにするとCDになります。しかしそこはご主人さまがこだわって選んだタイル。妥協するということは、後に後悔の可能性を残すということ。そこで、デザイナーは「減額対象から外しましょう、ぜひ使いましょう!」と、採用することに。
一方で別の場所で、例えば建具をオーダーメイドではなく既製品の中から好みの物を採用することでVEを図ったというお話しでした。
完成見学レポートまとめ
フルスケルトンにすると、リノベーションの可能性が広がるというのは知っていたつもりですが、今回の、立地環境を活かし、生活導線を整え、シームレスな空間をつくりつつ、それぞれの場所はゆったりとした設計というのはどこを見ても心地が良いものでした。
間取りの繊細さと、デザインの大胆さは、写真だけではわからなかった点でもあります。
完成見学会は、期間が限られたほんの少しのチャンス。
もし気になるテイストの物件があったら、迷わず見せて貰いに行くことをお勧めします。