リノベのハウツー
2020.01.27
戸建て住宅の新耐震と旧耐震、あなたが選ぶ基準はどこ?
今回は中古物件で気になる耐震基準のお話です。
空き家の急増を受けて行政が動き始めています。戸建て住宅の市場にはたくさんの中古物件がありますが、選ぶ中で気になるのは耐震基準のこと。地震で壊れない家の判断基準である耐震基準は、どこを見て選ぶべきか。
日本はどこで地震が起きてもおかしくない地域です。
旧耐震基準を選ぶメリット
戸建て住宅では新耐震基準が好まれます。日本ではどこで地震が起きてもおかしくない地域ですので、地震に強い家が求められるのは当然です。
その中でも旧耐震基準を選ぶメリットがあります。それは住宅価格の安さと耐震改修工事です。
住宅価格の安さ
住宅価格が安いのは、築年数が経過しており金額が安くなります。
不動産評価を計算するうえで、旧耐震基準で建てられた住宅は最低価格で計算されます。新築時の1割程度。100~200万円ほどです。また、100~200万円となると建物解体費用に相当するため交渉次第では解体費用と相殺ということもできます。また、火災保険は築年数に関わらず新築を立て直した時の費用で計算されるため、旧耐震でも保険料が変わらないのもポイントです。
耐震改修工事で新基準に適合させる
旧耐震基準で建てられた住宅であっても、耐震改修工事をすることで新耐震基準に適合する建物を手に入れられる点です。
行政は耐震改修工事に力を入れています。日本ではどこで地震が起きてもおかしくない地域に加えて、旧耐震基準で作られた建物もたくさん残っています。これらの建物を耐震補強して地震被害を少なくすることを目的に補助を勧めています。
気になる費用も、国や都道府県から補助金を出すところが多く、少額で補強することもできます。例えば、東海地震が心配される静岡県や愛知県では100万円近い補助金を受けるところもあります。
技術も進歩しています。壁を壊さずに耐震補強できる工法も登場しており、以前よりずっと耐震補強工事が行いやすくなりました。住みながら耐震補強工事を行うこともできるので、費用の節約にもなります。
新耐震と旧耐震の違い
新耐震、旧耐震という言葉をよく見かけます。ところが不動産広告や物件情報をみてもどこにも出てきません。この言葉、難解な法律を分かりやすく区別するために使われる言葉です。きちんとした表現が必要な書類には乗せられないのですね。
新耐震と旧耐震の境目
新耐震基準と旧耐震基準を分けるには、分かれ目が大切です。
新耐震・旧耐震基準の分かれ目は1981年5月31日です。この日までに確認申請がされた建物を旧耐震基準、この日以降はすべて新耐震基準となります。確認申請の日というのがポイントで、実際に建ったのはこれより後になってしまいます。
中古物件広告の多くには建築年月日が記載されていますが、建築年月日からは新・旧耐震基準のどちらに適合しているのか調べられません。確認申請日を調べるには、市町村の建築指導課に行き調べる必要がありなかなか難しい所です。
新耐震と旧耐震の強度の違い
新耐震と旧耐震を比べると、新耐震基準が地震に対して強い建物です。
新耐震基準では、一般的に震度6強~7程度の地震に対して倒壊しないことを規定しています。一方、旧耐震基準は震度5程度で即座に倒壊しないことを規定して基準が作られました。
震度5は、2016年に発生した熊本地震に限らず1年のうち全国各地で複数回発生しています。自分の住んでいる家が、震度5に合う確率は高くありませんが不安を覚えることは確かです。
新耐震、旧耐震にかかわる制度
新耐震基準、旧耐震基準にかかわる制度は、地震に対する強さの基準とお金に関する基準の二つに大別できます。古い建物が災害に対してリスクの高いことや、省エネ・環境性能が低い点からなどから、新耐震基準で建てられた建物は各所で優遇されています。
地震に対する強さの基準
・建築基準法
新耐震基準と旧耐震基準の違いは、建築基準法にあります。1981年に地震に対する強さの基準が変わり、以前よりも大幅に強度が引き上げられました。1981年5月31日以前に建築確認を取得した木造住宅は地震に対して弱い作りになっています。
・耐震改修促進法
旧耐震基準で建てられた建物をそのままにしておくと、地震で沢山の損壊を受けることが今までの経験で分かっています。行政が少しでも被害を減らすために成立したのが耐震改修促進法です。
地震に弱い建物の耐震改修を行い、今の基準に引き上げ被害を減らすことが特徴です。地震に弱い木造住宅に補助金を出すことで、少しでも耐震改修が進むようにしています。
・住宅性能表示制度
より良い建物を、地震に強い家を建ててもらうことを狙い制定された制度です。
「耐震等級」というキーワードを聞いたことのある方も多いと思います。より地震に強い家を建てた場合、それを公的に証明して補助金を出す制度です。
耐震等級には等級1から3まであり、等級1は建築基準法と同程度です。最高の等級3は建築基準法で決められた1.5倍の強さがあり、消防署や市役所などの地震時に避難するための公共建築物と同程度の強さに決め垂れています。
お金に関わる部分
・住宅ローン減税
新築を建てたり、築浅の中古物件をローンで購入したりするとローン残高に応じた減税が受けられるのは一般的なお話です。木造住宅では新築か築20年以内の物が対象になりますので、住宅ローン減税が受けられるのは新耐震基準を満たした地震に強い家です。
その他、旧耐震基準の建物でも耐震改修工事を行い耐震基準適合証明書の交付を受けることで住宅ローン減税を受けられます。
・1回限りで減税がある(登録免許税、不動産取得税)
住宅ローン減税は一般的に10年間減税されますが、登録免許税と不動産取得税は買ったとき1回限りで減税されます。
この二つの税制も、住宅ローン減税と同じく新耐震基準を満たす建物しか受けられません。また、築20年以上の建物は一定の耐震基準を満たす耐震基準適合証明証を用意する必要があります。
・地震保険料
地震保険料も新耐震基準を満たすことが10%割引の条件となっています。
旧耐震制度で建てられた建物は、耐震診断で新耐震基準を満たすことが証明できれば同じく10%の割引を受けられます。
まとめ
耐震基準の新・旧についてご紹介しました。
新耐震、旧耐震はわかりやすく付けた呼び方です。正確には1981年5月31日が境目と覚えていただければお役に立てると思います。
新耐震・旧耐震は地震に対する強さが違います。新耐震基準が優遇されていますが、旧耐震基準も耐震改修などを行えば新耐震基準並みの優遇を受けられます。
ぜひご参考にしてください。
参考
・「プロだけが知っている! 中古住宅の選び方・買い方 」高橋正典,朝日新聞出版
より
・耐震補強工事に対する補助【木造住宅耐震補強助成事業】,静岡県ITナビゲーション
・耐震診断・耐震改修事業関係,愛知県
・No.1214 中古物件を取得した場合,国税庁
・不動産の税金,住友不動産販売
・地震保険の割引制度について(PDF),一般社団法人 日本損害保険協会 より