リノベのハウツー
2018.08.11
猫とハッピーに暮らすための10個のルール
ペットを飼っている家庭が増えつつある近年、ペットも大事な家族です。
だからこそ、家づくりに知っておきたい、猫と一緒に暮らすために私たち家族ができる10のことをご紹介します。
今回は、猫のキモチが分かる建築家であり、ペット共生住宅の専門家として海外でも知られている廣瀬慶二さんにお話をお聞きしました。
猫が機嫌よく過ごしてくれれば、それは人間にとっても至福の空間なのです。
目次
1. 猫の性質を理解しよう
猫は犬と違い、後ろ足で蹴って高い場所に跳び乗るなど、立体的に生活できる筋肉を持った生き物です。
この身体的性質を家の中で存分に発揮させてあげるためには、きっかけとなる刺激が必要です。
「あれ何だろう?」と興味を引くものがあると、「行動」に移します。
それによって面白いものが見えるなどの「好ましい結果」が生じると、猫はこれを繰り返します。
例えば、窓際のキャットタワーに上って見える景色が変わると、そのキャットタワーはよく使ってくれます。ところが、キャットタワーが家の隅にあって、上っても面白い結果が伴わないと、使わなくなってしまうのです。
この性質をうまく利用することが、猫の家をつくる際の“コツ”です。
2. 猫が健康に暮らせる家とは?
猫は立体的に生活できる筋肉を持っているのに、室内飼いだからといって、それをずっと使わないで過ごすような生活を強いることは、当然のことながら身体的にも精神的にもよろしくないもの。
「猫はいつも寝ているから、それほど運動をしなくてもいいのでは?」と思うかもしれませんが、ただでさえ少ない運動の時間をそがれてしまうとことは、彼らの健康にとっては大問題。肥満のリスクも高まります。
猫が高齢になっても無理なく動けるように、緩やかな道もつくっておくなどの配慮も大切です。
3. 猫が住む家は、猫の町である
完全室内飼育の猫にとっては、世間のすべてが家の中にあり、家の内部空間がそのまま自分が暮らす町並みです。
猫が快適に過ごせる家をつくることは、まさに都市計画なのです。
大事なのは寸法と規則性で、猫にとっても規則にのっとっていない町並みは気持ちが悪いものなのです。
ステップを上っていったら突然途切れてしまったり、急に道幅が変わってしまったりしたら、途方に暮れてしまいます。
だからこそ、寸法にも規則性にも考慮して、きちんと設計しなくてはいけません。
4. 連続的に多層空間を構成する
猫が本来持っている身体的機能を生かして楽しく暮らせる家にするためには、最初の一歩が肝心。
例えば、歩き出してみたくなるような何かがあったり、上ってみたくなるような形をしていたり。最初の一歩を何回も繰り返すことで猫の動きはだんだんとスムーズになっていき、それが連続することで家の中を動き回るようになるのです。
だから、次の一歩を踏み出したくなるような仕掛けも欠かせません。
まっすぐかと思ったら方向転換したり、行き止まりかと思ったら上や下に行ける抜け道があるなど、次の行動にスムーズに展開する仕掛けを存分に用意しましょう。
5. 猫が退屈しない空間をつくる大切さ
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キャットウォークは道路であり、のんびりくつろいだり下を眺めて楽しんだりする場所にもなる。
猫が立体的に動ける仕掛けをつくったとしても、それを気に入るかどうかは猫次第。
大切なのは、過剰に供給することです。猫はその中から気に入ったものを選んでくれます。例えば、窓は多ければ多いほどいいのです。窓の外の風景は、一見いつもと変わらないようでも、太陽が動いたり影ができたり、虫や鳥が飛んできたりと、猫にとっては変化に富む世界が広がっています。
猫の目は近くにしか焦点を合わせることができず、はっきり見えているのは5〜7mくらいの範囲。窓がたくさんあれば、どこかで面白い番組をやっている。なおかつ飼い主が遊んであげれば、より面白くなります。
6. 猫が喜ぶキャットウォーク・猫ステップって?
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上部に設置された木製ハンモックは、リラクゼーションスペース。猫たちがくつろいでいる姿を下から眺めるのも楽しい
猫が喜んで使ってくれるキャットウォークなどの装置をつくるには、町のように広い場所や細い路地、曲がり角などがあり、次々と場面が展開していくような工夫が必要です。
よく見かけるのが、始まりと終わりが短すぎるキャットウォーク。
行って戻って終わりで何の展開もないと、猫はすぐに飽きて使ってくれなくなります。
もちろんサイズや規則性は重要で、特にステップは段差を統一しましょう。
できれば回遊性を持たせ、タテにもヨコにも自在に動けるようにしましょう。掃除を気にする人がいますが、脚立があれば柄のついたふわふわのダスターなどで簡単にホコリを取り除けるので、ご心配なく。
7. 爪とぎとはテリトリーの境界線に設置すると効果的
猫は、マーキングのために爪をとぎます。
家の中でも、爪をとぐことでテリトリーを主張しているのです。
そのため、テリトリーの境界線に爪とぎ器を設置すると効果的です。
例えば、壁の出っ張っているところや出入り口。その近くに好みの爪とぎ器を設置して誘導することで、壁や家具などが傷つくのを防ぐことができます。
柱に麻縄をぐるぐる巻き付けた「爪とぎ柱」もおススメです。「おそらくこのあたりで爪をとぐだろう」と予想される場所、リノベーションの場合ならば、今まで爪をとがれてボロボロになっていた場所に、キッチンパネルを貼るのも有効。
表面がつるつるのキッチンパネルは爪が引っ掛からないので、猫にとっては面白みがなく、好ましい結果が生まれないのでその結果、爪をとがなくなります。
8. インテリア性も高いおススメアイテムは木製ハンモックや“猫穴”
猫たちが安全で楽しく快適に過ごさせたいですが、同時にデザイン性にも配慮したいところ。
例えば、薄い板をすのこ状に並べてつくった木製ハンモックは、猫が寝ると少ししなり、ゆらゆらして大人気の昼寝スペースに。ドアや壁などに設ける”猫穴”もオススメアイテム。20㎝角が猫にとって刺激になるちょうどいいサイズで、通らずにはいられないようです。
9.食事とトイレはどうすればいい?
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食事スペースとトイレを上下に分けた例。ステップをつけてあげればラクに行き来ができ、コンパクトなスペースを有効活用できる。上部の吊り戸棚にはキャットフードのストックなどを収納できる。
猫のトイレは臭いの問題があるので、基本的には食べる場所と離して設置します。
上下に分けて配置する場合もありますが、その際は必ずトイレの近くに換気扇を付けること。
猫ダイニングが腰高くらいの位置なら、お皿を出したり下げたりするときに腰を曲げなくてすむから、人間もラク。
人間用トイレの中に猫トイレを設置する場合は、猫と鉢合わせしてしまうことがあるので、来客時には注意が必要。
猫のトイレは、汚れたらすぐに気がつき、健康状態もチェックできるように、通り道などにくようにしましょう。
10. いちばん気をつけるべきは“逃亡防止”
いちばん気をつけなくてはならないのは、“逃亡防止”です。
いったん外に出てしまうと、事故や病気の感染など危険があります。
玄関は、手前の廊下に扉を二重に設置し、猫が玄関土間に入れないようにすれば、人間は猫の飛び出しを気にせずに玄関ドアを開けられます。内側の扉がガラス入りにすれば、猫が出迎えてくれる玄関に。
網戸は破れないように強化し、ストッパーを設置しましょう。災害時の対策としては、猫がパニックになったときに逃げ込む場所にキャリーを置いておくのもオススメです。
まとめ
家猫のための家づくりでは、住宅地などでは近隣への迷惑も考慮して、完全室内飼育を前提に考える必要があります。
家猫にとって、家は町そのもの。自由に行き来できる道や交差点や広場をたくさんつくり、のびのびと過ごせる環境を整えましょう。
pfofile
廣瀬慶二
1969年兵庫県生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了。
設計事務所ファウナプラス・デザイン代表。一級建築士、一級愛玩動物飼養管理士。
ペット共生住宅の専門家として海外でも知られており、『へぐりさんちは猫の家』(幻冬舎)など著書多数。最新刊『猫がうれしくなる部屋づくり、家づくり』はプレジデント社から発売中
山川修一(扶桑社)=撮影 ファウナプラス・デザイン=画像提供