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リノベのハウツー

2018.08.13

犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと

犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと

ペットを飼っている家庭が増えつつある近年。ペットも大事な家族です。
猫に比べれば犬は野性味が薄れているけれど、だからこそ、その社会性や飼い主との関係性を理解して、家づくりにいかしたいもの。
そこで「犬が機嫌よく暮らせる家ために飼い主ができる10のこと」として、犬のキモチが分かる建築家でありペットを家族の一員と考え、「家族」全員を幸せにする家づくりに取り組む前田敦さんにお聞きしました。

1. 犬の性質を理解しよう

犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと

犬は人間が最初に家畜化した動物とされていて、その歴史はなんと40万年にものぼります。
しかも、オオカミを祖先に持つ犬は、群れで行動する社会性の発達した動物なのです。それは今も変わりません。
だから、犬とともに暮らす場合、人はリーダーシップを発揮しないといけません。
群れで生きることを考えると、犬が屋内で人と暮らすことは理にかなっているといえますが、家はあくまで人の都合を優先した場。犬の身体性や習性を理解したうえで、プランニングに生かしてあげましょう。
 

2. 犬が心穏やかに暮らせる空間とは?

犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと

犬にとっていちばん大切なのは、飼い主です。
犬は日中寝ていることが多いですが、起きている時間は飼い主の行動を目で追っているか、あとをついて一緒にいるかどちらかです。
だから、人が一番長い時間を過ごす、リビングやダイニングにきちんと犬の居場所をつくることが大切。
プランニングにスキップフロアを想定している場合ならば、その段差を利用すれば、彼らが安心して過ごせる格好の居場所ができます。
「それならソファを置けば、一緒にくつろげるのではないか」と思われるかもしれませんが、人がリーダーシップを発揮できていない場合や、犬が自分よりも下の順位だと思っている家族がいる場合、犬がソファを独占したり、座ろうとした人を噛むなどの問題行動に結びつくことがあるので注意が必要です。
 

3. ペット用の扉はオススメ!

犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと

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扉や壁に取り付けられる犬用の出入り口。小型犬用から大型犬用まで大きさも各種揃う

住まい全域を犬が出入りできるようにしておくこともひとつの考え方。しかし、間仕切りや扉の出入りが問題になってきます。
家族のプライバシーも問題になるし、光熱費を考えても現実的とはいえません。
そこでおすすめしたいのがペット用の扉です。
透明なソフト素材でできたフラップとマグネットの組み合わせで、壁や扉に取り付けることができます。
また、動物が苦手な来客があることを考えると、犬をシャットアウトできる空間も設けておいたほうがよいでしょう。
多頭飼いの場合には、病気にかかったり老いて元気がなくなった犬がゆっくり休むための場所としても機能する空間にもなります。
 
 

4. 犬にとって危険なのは「階段」と「キッチン」

犬にとって危険なのは、階段とキッチンです。
まずはキッチンについてお話します。
まず、キッチンには犬が食べてはいけない食材があふれています。
タマネギ、チョコレート、ブドウはその代表格で、個体差にもよりますが命に関わることが多い危険な食材です。
できるだけ犬が入れないキッチンをプランニングしましょう。また、いたずらで電気コードをかじって感電する事故も多いもの。コードが集中するテレビやオーディオはキャビネットに収めましょう。

5. フローリング?カーペット?床選びは大切なポイント

飼い主にくっついて歩き回ったり、はしゃいでいるときには家じゅうを走り回ったり……。
そんな犬の足と接する床材選びはとても大切なポイントです。
フローリング材は掃除も楽だし、見た目もシンプルで一般的な床材なのですが、犬にとっては厳しい一面も。犬の爪や肉球ではつるつる滑ってしまうのです。
このため関節への負担が大きく、長じて障害を引き起こすことも。
フローリングの場合は「愛犬の床」など、抵抗を増し、床のキズを防ぐフロアコーティングがあるのでこれを用いるのもひとつの手です。

6. 犬が無理なく昇降できる階段のつくり方

犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと

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背骨に注目。ダックスフントの場合、背骨が伸びるくらい緩い傾斜でないと階段を下りられない

家の階段は人の上り下りと省スペースだけをテーマに考えられています。
4本足の犬にとって、この階段がやっかいなもの。特に下りは一歩踏み外せば彼らは頭から転落してしまいます。
ダックスフントなど胴が長く脚が短い犬種だとさらに深刻で、人と同じ階段を上り下りすることでヘルニアを起こすことも多いのです。
犬が無理なく使えるように、階段の踏み板を滑りにくい素材にして奥行きを深くし、さらに傾斜を緩めるといいでしょう。
 

7. ベランダでの飼育はトラブルのもと

犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと

犬にまつわるトラブルは、鳴き声、臭い、抜け毛がもとになることがたくさんあります。
犬をベランダで飼おうとすると、これらの問題が一気に顕在化してしまうので、できるだけやめたほうがいいでしょう。
犬にとって敷地に近づくものは警戒の対象なので、ベランダから見える部外者すべてに吠えることになります。
季節の変わり目には抜け毛が増え近所に飛んで、迷惑をかけることに。
犬にとってもベランダは決して過ごしやすい環境とは言い難いのです。
直射日光が避けられないため、真夏はいうまでもなく、春・秋にも気温が上がりすぎて、熱中症を起こす危険が増えます。
犬を飼うときには、屋内で一生一緒に暮らす覚悟を持つべきでしょう。

8. 食べるところ、排泄するところの配慮

犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと 犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと

 
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犬にとってちょうどいい大きさの「専用室」

食事と排泄と睡眠は犬が無防備な状態になるときです。
不安な状態で食事や排泄をしなくてすむよう、彼らに居心地のいい空間をつくってあげましょう。
ポイントは天井の高さ。あくまで経験則ですが、彼らは体高の1.5倍くらいを心地よい高さと感じるようで、新築した家でもそうした空間があると、何も教えなくてもそこにすっと入ることが多いです。
もちろん食事とトイレの場所は別々に。
低くつくったトイレの上にはペットシーツのストックなどを置いておけばいいし、食事場の上にはフードを保管しておけば効率的です。
また、トイレは臭いがこもらないように、サイズが小さくても良いので換気扇を付けておきましょう。

 

9. 人も使いやすいグルーミングスペースを

犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと

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2台並んだ洗面台。1台をペット専用にしてある

屋内で犬を飼う場合、入浴の必要があります。
外部水栓でもお湯が出るようにすれば、屋外でも洗えます。
また、洗うのと同じくらい労力が必要なのが乾かすこと。
犬の多くはアンダーコートといって、皮膚の近くに細い毛が密集して生えていて、ドライヤーがかけにくく、乾かすのに時間がかかるのです。
このときに中腰などの無理な体勢を取らなくてすむように、例えば小型犬なら専用の洗面台を設けるのもひとつのアイデアです。
大型犬の場合は、人用の浴槽にすのこを渡して、その上を使うのもいいでしょう。
 

10. 留守番をさせるときの配慮

犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと

そのほか、人のいないときに問題行動を起こす犬は多いもの。
代表的なのは無駄吠えと破壊行動です。無駄吠えはしつけによって防ぐことが基本ですが、外部の音をシャットアウトすることも有効です。
中庭を中心に開口部を設ければ、外へも音が漏れにくくなります。
破壊行動については、壊されたくないものは、犬が届かないところに置くこと。
ジャンプ力のある犬種の場合には、その高さも考慮します。
また、犬に留守番させる場合、熱中症に注意。
留守中もエアコンを稼働させることが多くなるので、断熱性能を上げて光熱費を下げましょう。
エネルギーロスの多い開口部はLow’Eガラスなどを入れて断熱・遮熱性を高めておきましょう。

まとめ

犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと 犬が機嫌よく暮らせるためにできる10のこと

私はペット共生住宅を設計するときに、ペットを家族だと考えます。
彼らは4本足で、我々よりも身長が低いけれど、そういう個性を持った家族です。家族に足が不自由な人がいれば、バリアフリーにしたり、手すりをつけたり工夫をします。
それと同じプロセスをペットにも考えればいいのではないでしょうか。ただ間違ってはいけないのが、ペットを優先するあまり人の快適性を損なってはいけないということです。
 
 

pfofile
前田敦
1958年山口県生まれ。日本大学大学院建築工学専攻博士前期課程修了。
前田敦計画工房代表。ペットを家族の一員と考え、「家族」全員を幸せにする家づくりに取り組む。フリーペーパーなどでもペットと暮らす家づくり指南を行っている
 
 

川俣満博、杉田賢治、平井広行、山川修一(扶桑社)=撮影

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