お客様インタビュー
2019.03.10
築62年のテラスハウスをリノベ。インテリアスタイリスト・窪川勝哉さんの自宅を訪問
このクラシカルな佇まいの家で暮らすのは、インテリアスタイリストとして活躍中の窪川勝哉さん。
「仕事柄、最新のもののチェックもしますが、個人的には古いものにしか興味がありません」との言葉通り、窪川さんが暮らすのは築62年(昭和31年 1956年築)のテラスハウスです。
1・2階合わせて120㎡と広く、しかも都心の中野区という好立地ですが、物件価格は1000万円台前半だったそう。
実はこの物件、窪川さんが以前賃貸で入居したことがあるというから驚きです。
マメにチェックしている不動産のウェブサイトで偶然見つけたとか。
水回りなどの設備に問題がないのはわかっていたため、リノベーションのポイントはそれ以外に絞って700万円で工事を行いました。
“レトロ風”ではなく、本物のレトロ空間とそれを生かすプロならではのテクニックを見ていきましょう!
見習いたい! プロのインテリアコーディネート
2階の寝室にはカーテンで仕切れるベッドがあり、周囲に木馬やレトロなテレビが置いてあります。
隣の仕事用のデスクにはビリヤード台を使ったりするなど、窪川さんならではのアイデアが満載です。アールの下がり壁やガラスブロック(実際はプラスチック)の意匠が印象的な小部屋は、クロゼットとして利用しています。
寝室の隣は、ソファーを置いて個室に。
無垢材のヘリンボーン模様のフローリング、アンティークのトランク、シャンデリアなど個性の強いアイテムを揃えています。
時代や国境を越えたあらゆるテイストの家具、雑貨を混在させながらも統一感のある空間づくりはさすがです。
「色や形が多少違っても、全体のトーンや、たとえば、家具の脚部などのディテールが合っていれば、インテリアとして成立します」と窪川さん。
個室と寝室は階段を上がって右側にあり、左側はストックルームになっています。
ストックルームにはスタイリングに使用する雑貨類を収納しています。まるでお洒落な雑貨屋さんのようですね。
1階のリビング・ダイニングには、ドイツから空輸で取り寄せたカーペットが敷いてあります。
テーブルとして使用しているのは、お気に入りのアンティークショップで購入したトランクです。
手を入れる・入れないは何を基準に?
長い年月の間、庭部分への増築など、住まい手が替わるたびに建物に手が加えられて変化してきたテラスハウス。
窪川さんは2階の個室入口にあった押し入れを撤去し、吊り下げ式の引き戸を新たに設けました。
「床にレールがあるのがいやだったので、引き戸はすべて吊り下げ式にしました」。
1階のキッチンとダイニングの間の壁は取り払ってバーカウンターにしました。
けれども、図面上で大きく替えた部分はほとんどありません。
「ガラスの引き戸は昭和31年の竣工当時のもの。意匠が気に入っているので、窓もできるだけ似た意匠のものに替えました。他に細かいところでは、ドアノブを替えましたが、真鍮のピカピカした感じが嫌だったので、薬品であえて汚してみました」。
階段下にあるトイレはドアの右上方には小窓があり、明かりがついていれば使用中と分かる粋な仕組みになっています。この窓は元からあったもの。
古い家ならではの意匠を、上手に生かすテクニックはさすがです。
元々あったホーローの流し台とタイルが気に入っているため、キッチンにはあえて手を加えませんでした。
レトロな洗面台や、三角形の珍しい形の浴槽もそのままにしました。
その一方で洗面室はタイルの部分を残しながら、残りの壁をラフに塗り直して仕上げています。
そのため、白い壁でありながらものっぺりとならず、陰影が生まれているのがわかります。
バスルームはレトロなモザイクタイルを真っ白に塗装しました。
以前のオーナー文筆業の方だったそうで、引っ越してくる前からあった造り付けの本棚はダークな色に塗装。
仕事柄たくさんの雑誌や本のストックがあるので、重宝しているとか。
さりげなく飾られたオブジェにも窪川さんの美意識が垣間見えます
リノベ自体は2010年に行い、物件は当時でも築50年以上でした。
「この家で考えたとき、50年以上経過しているからといって劣化しているとは思わない。ちょうどいい感じになってきた頃だと。それがこの値段で買えるということが、僕にとってとても幸せなんです」と窪川さん。
窪川邸は中古物件への考え方、住まい方の大きなヒントになりますね。
設計/窪川勝哉+アイキューブ
撮影/takuji iigai