リノベのハウツー
2022.05.20
マンションの間取り選びのポイント。理想の間取りで快適な暮らしを
間取りは住宅選びで気になることの1つ。快適に暮らすには、家族構成やライフステージに合った間取りであること、動線が考えられた間取りであることなどが必要です。
そこで今回は、間取りを選ぶ際にチェックしたいポイントや、マンションによくある間取り例をご紹介します。希望の間取りの物件がない場合は、中古マンションを買ってリノベーションするという方法も。間取りを変えたリノベーション事例もご紹介します
間取りに関する基礎知識
間取りを考える上で知っておきたい基礎知識を解説します。
間取り図を見るポイント
間取り図を見る際に必要な、基本的な知識をまとめました。
<部屋の構成>
部屋の構成を表す際、2LDKや3LDKといった言葉が使われます。Lはリビング、Dはダイニング、Kはキッチンを指します。最初の数字はLDKを含まない部屋の数のこと。つまり、2LDKであれば2つの個室とLDKがあるということです。
部屋の数やLDKの広さをリノベーションで変えることを前提にするなら、PS壁(パイプスペース)や水回りの位置、建物の構造もチェックしておくと良いでしょう。
<部屋の向き>
部屋の向きを知ることでその部屋の日当たりの良さが分かります。間取り図に示された方位記号で部屋の向きを確認しましょう。例えばバルコニーなどの大きな窓がある方角が南であれば、その部屋は日当たりが良いということです。
<部屋の広さ>
部屋の広さは「〇m2(平米)」などで表されます。m2は縦(m)×横(m)で表される面積です。
「〇畳(帖)」という形で示されることも多いですが、例えば「6畳」というと畳6枚分くらいの広さが目安です。1畳の目安は1.62m2以上のため、6畳は9.72m2以上の広さということになります。
(参考:不動産の表示に関する公正競争規約施行規則|不動産公正取引協議会連合会)
DKとLDKの違い
DKは食堂と台所の機能が一緒になっている部屋、LDKは居間、食堂、台所の機能が一緒になっている部屋です。両者の違いは居間(リビング)の機能を持っているかどうかという点にあります。
不動産公正取引協議会は、建物が取引される際のDKやLDKといった表示のあり方について、広さの目安を以下のように示しています。
居室数が1部屋→4.5~8畳未満ならDK、8畳以上ならLDK
居室数が2部屋以上→6~10畳未満ならDK、10畳以上ならLDK
(参考:不動産の表示に関する公正競争規約施行規則|不動産公正取引協議会連合会)
大切なのは、全体の広さ
最近は広いリビングが人気の傾向にあります。そのため、例えば3DKや3LDKと聞くと、3LDKの方がなんとなく良いように感じることもありますね。確かにLDKはDKよりも広いので、リビングの広さが欲しい場合には正しい見方です。しかし、他の部屋の広さは分からないので、物件選びの際はDK、LDKという表記にとらわれずに全体の面積を見ると、選択肢が広がります。
マンションの間取り選びのポイント
暮らしやすさを左右する間取り。マンションの間取り選びで考慮したいポイントを5つご紹介します。
家族の個室、子ども部屋をどうするか
家族の人数によって必要な部屋数は変わってきます。子どもがいる場合は個室を持たせるか、自宅で仕事をする場合は仕事部屋が必要かなどを考慮しましょう。最近はリビングの一角に子どもが遊ぶ空間を設けたり、ワークスペースをつくったりする例もあります。どのような形が家族に合っているかを考え、間取りを決めましょう。
子どもに個室をいつから与えるかは、子どもの年齢や成長度合い、家族のライフスタイルによって変わってきます。さらに、子どもの成長によって子ども部屋の用途は変化していくものなのです。子どもの個室について、以下の3つの時期に分けて解説します。
1.未就学時期
2.小学生になってから
3.小学生高学年頃から
1の未就学時期はリビングなどで家族と過ごす時間が多く、また寝室を分けなくてもよい場合は個室は不要であることが多くなります。個室をつくる場合は、子どものものを収納する場所として使うのも良いでしょう。
2の小学生になると、ランドセルや教科書類、学習机など子ども用のものが一気に増えます。そのため、子どもに個室を与えるか検討する方が多い時期でもあります。子ども部屋を与えて夜に1人で寝る練習をしてみるのも1つです。
3の小学生高学年、つまり思春期の頃になると成長とともに自分だけの空間が必要になることが多くなります。子どもに個室を求められた際に対応できる間取りになっていると安心です。
ライフスタイルに合っているか
ここ1、2年で働き方も変わり、ライフスタイルとしても家族が自宅で過ごす時間が増えました。仕事・子育て・趣味と過ごし方はさまざま。ではどんな基準で空間をつくれば良いでしょうか。
<在宅ワークの場合>
ポイントは、空間の広さと音の問題です。実際の導入例としては
・リビングの一角に個室を設け、ガラス張り(内窓)とすることで圧迫感や音漏れを軽減する
・寝室や廊下の突き当りなど人が来ない場所にワークスペースを設ける
などです。
自宅時間が一人でない場合は、仕事に集中して取り組める環境をつくるために空間を別にする必要が多くなります。デスクを置けるサイズの寝室のある間取りにすれば、デスクを置くだけですぐにでもワークスペースをつくれるでしょう。リビングの一角にリノベーションなどでデスクや本棚をつくりつける方法もあります。
<乳幼児がいる場合>
リビングで過ごす時間が多い時期です。遊ぶための広めのリビングや、お昼寝のための隣接する和室やベッドのある居室が重宝します。扉を閉められる部屋だとママはリビングで作業したり、テレビなどで休憩できたりします。対面式キッチンだと、調理中もリビングで遊ぶ子どもの様子をうかがえるでしょう。
<趣味の時間を過ごす場合>
趣味にもよりますが、居室で行う趣味の場合は大きくわけて作業場所と用具の収納場所が必要になります。作業空間と用具のサイズを確認して、必要な場所を確保しましょう。キッチンやリビングで行う場合は、収納場所を具体的に決めておくとすっきりと片付きます。
動線が考えられているか
動線には、調理・洗濯・掃除・ゴミ出しなどの家事動線や、洗顔や着替えなどの身支度・トイレ・入浴といった生活動線があります。
例えば、洗濯機置き場とキッチンを近くにすると家事動線が良くなり、家事の同時進行がしやすくなるでしょう。キッチンや洗面に出入口を2つ設けて行き止まりをつくらないことで、家族の動線がぶつかりにくくなります。このように生活する上での動線を考えて間取りを決め、暮らしやすさを向上させましょう。
また動線と収納の位置もポイントです。例えば回遊できる水回りの場合、動線としてはスムーズですがそこが壁になれば収納がアップするということでもあります。共働きでとにかく時間が優先なのであれば回遊動線は魅力的ですし、時間よりも収納が必要であれば回遊性の優先順位は下がります。マンション全体の収納量によっても変わりますね。
ライフステージに合わせられるか
長いライフステージにおいては、出産や子どもの成長、子どもの独立、親との同居などで家族構成やライフスタイルも変化していくものです。そのときによって必要な部屋数や広さも変わってきます。
子どもがいるうちは子ども部屋に、子どもが独立後は趣味のスペースにするなど、将来を見据えて間取りを選ぶのも1つです。引き戸による間仕切りがある部屋は可変性があります。状況に応じて個室や大部屋にできるため、部屋の用途も広がるでしょう。
収納のスペース、位置は適切か
収納を成功させるコツには、ものの定位置を決めるという考え方があります。持ちもの全ての量を把握して、使用する場所の近くに収納スペースを配置すると便利でしょう。
<キャンプ・自転車・サーフィンなどアウトドア用品が多い場合>
玄関収納が大きい間取りや土間のある空間、廊下の壁を使える間取りを中心に見ると良いでしょう。玄関に隣接する寝室が広い場合は、部分的なリノベーションで寝室の壁を壊し、土間を広げるなども可能です。土間が広くなることで居室空間が狭まるのが気になる場合は、廊下を広げて玄関から続く壁を収納スペースにする方法もあります。
<衣類・雑貨が多い場合>
WIC(ウォークインクローゼット)、壁一面の収納など基本的な収納が多い間取りがおすすめですが、部分リノベーションなどで間取りを少し変えて収納を作ることも可能なので、予算に余裕がある場合は優先度を高くしなくても良い部分です。家族の衣類をまとめて収納する場合は、親の寝室からも子ども部屋からもアクセスできるウォークスルータイプも便利でしょう。
<キッチングッズやストレージが多い場合>
吊戸棚や引き出しなどのキッチン回りの収納が十分でない場合は、パントリー収納がおすすめです。パントリー収納はリビングから見えにくい場所につくられることが多いので、見せたくないけれどもよく使うものの収納に向いています。玄関からキッチンに抜ける通り道にパントリーがあると、買い出し後の動線がスムーズです。
部屋の方角もチェック
部屋の方角によって採光や住み心地が変わってきます。それぞれの方角別の特徴を以下にまとめました。
●南向き
日当たりが良いため照明の費用を抑えられ、湿気もたまりにくい。夏場は暑い、家具が日焼けしやすいなどのデメリットもあるが人気の方角。
●東向き
朝は日当たりが良く、午後は日が当たらないため夏場でも室温が上がりにくい。一方で冬は暖房費がかかりやすい。洗濯物は朝のうちに干すとよく乾く。
●西向き
午後から夕方にかけて日の光が入るため、夏場は暑いが冬場は暖かい。洗濯物は午後から干しても乾きやすい。
●北向き
直射日光が当たらないため部屋に差し込む光がやわらかく、家具の日焼けが起こりにくい。湿気がたまりやすい、洗濯物が乾きにくいといった面も。
方角によって部屋の環境が変わります。人気があるのは南向きや東向きです。一方で西向きや北向きはあまり人気がありませんが、販売価格が比較的安いというメリットがあります。
マンションの間取り例とそれぞれのメリット・デメリット
よくあるマンションの間取りのタイプと、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
田の字型
外廊下型マンション(共用廊下が外に面しており、昔ながらでなじみ深いスタイル)で最も多いのが田の字型の間取りです。田の字型は玄関から入って真っ直ぐのところに廊下、住戸の真ん中あたりに水回りが配置されることが一般的で、廊下や水回りを境に居室が田の字のように配置されるスタイルです。
田の字型が採用されることが多い外廊下型マンションは、マンション内のほとんどの住戸を南向きや東向きといった人気の方角にすることが可能です。その結果、日当たりが良くなって採光が良くなります。水回りをまとめると家事動線も良いため、合理的な間取りであると言えるのです。上下左右の住戸も同じようなつくりで、近隣の住戸間の騒音トラブルが起こりにくいというメリットもあります。
ただ、外廊下に面する部屋の窓はプライバシーの問題から開けにくいといった一面も。窓が開けられないと、住戸内の通風が悪くなってしまいます。
ワイドスパン型
バルコニー側の間口が広いタイプで、バルコニーに面した部屋を多くすることが可能です。窓が増えることで採光が良くなり、それぞれの部屋が明るくなります。室内廊下を短くして居室の面積を確保できるなどのメリットもあります。
ワイドスパン型はマンション全体の住戸数が少なくなることが多く、一住戸あたりの価格が高くなる傾向にあります。また、窓が増えるということは外気の影響を受けやすくなるということ。断熱性能の高い窓ガラスやサッシを取り入れることで、このようなデメリットは軽減できるでしょう。
センターイン型
玄関が住戸の中央付近に設けられている間取りです。玄関から各部屋につながるような間取りで、各部屋の独立性が高いのが特徴です。家族それぞれのプライバシーが守られる、廊下が短いため部屋や収納の面積を広げられる、通風や採光が良いといったメリットを得られます。ただ、供給数が少ないことや価格が高めなことが難点です。
両面バルコニー型
南と北、東と西といった反対の方角にバルコニーが設けられた間取りです。南と東など、反対側でない方向にバルコニーがある場合は2面バルコニーと言われます。
共用廊下に面した部屋がないため独立性が高く、通風や採光にも優れています。一方で供給数の少なさや建築コストがかかることなどのデメリットもあります。
角住戸型
角部屋のことで、他の住戸と面しているのが1方向だけの間取りです。隣接する部屋が少ないと、騒音トラブルのリスクも下がります。3方向が開口部となるため日当たりが良く、部屋が明るくなります。通風も良いため換気しやすいでしょう。
ただ、開口部が多いため外気の影響を受けやすく、建物の外からの騒音が聞こえやすいといったデメリットがあります。
事例紹介|中古マンションをリノベーションして希望の間取りに
中古マンションのリノベーションによって、希望の間取りを叶えた事例を3つご紹介します。
家族のつながりを感じられる間取りにリノベ(3LDK→2LDK)
左:before|右:after
もともと洋室だった部分は浴室や洗面スペースに。部屋数を1つ減らして開放感のあるLDKを実現しました。それぞれの居室の仕切りを引き戸にすることで、状況に応じて個室にしたり、戸を開けっ放しにして広々とさせたりとフレキシブルに使えます。キッチンは対面式を採用。調理中も家族とコミュニケーションがとれますね。
広々としたリビング&WICのある間取り(3LDK→2LDK+WIC)
左:before|右:after
洋室や収納を取り込んで広いLDKに、キッチンは位置と向きを変えてリビングを見渡せるようにしました。洋室に設けられたWICは最初からつくりたいと希望していたものです。
LDKの隅にはPS壁があります。これは設備スペースのための柱型で、取り壊せない壁です。こちらの事例ではPS壁を上手に活用してリビングの一角にワークスペースをつくりました。厄介な壁もアイディア次第で上手に活用できるのです。
取り払える壁はすべて無くして大胆にリノベ(2LDK→1R)
左:before|右:after
壁を取り払って大空間に、キッチンも移動させるという大胆なリノベーションです。ただ、浴室やトイレなどの使える部分はそのままにしています。
間取り図では分かりにくいのですが、リビングにロフトを設けて上はベッドコーナーに、下は収納スペースにしています(WTCの隣部分)。「ピアノを置く場所やヨガをするスペースが必要なためリビングは狭くしたくないけれど、収納スペースは欲しい」という要望を実現する形に。住む人に合わせて使いやすい間取りを実現できるのは、リノベーションだからこそです。
まとめ
間取り選びのポイントとしては、家族構成やライフスタイルに合っているか、動線が良いか、収納は適切かなどといったことが挙げられます。希望の間取りの物件が見つからない場合は、中古マンションを買って自分好みの間取りにリノベーションするという方法も。
長いライフステージにおいては、家族構成や生活スタイルが変化していくものです。長期的な視点をもって間取りを選ぶことも必要と言えるでしょう。
writing:ハナミ