リノベーションのアイテム
2020.11.14
シンプルなのに存在感、炙ったままの「アブリソケット」【HAGS|アイテム】
今回、HAGSからご紹介するアイテムは、ステンレスをガスバーナーで炙って作られたという、その名も「アブリソケット」というもの。よくあるただのソケットではない、作り手の想いが詰まった作品です。一見すると「何か違う」と気がつき、ついじっくりと見てしまいたくなります。
そこで今回は、そんな「アブリソケット」の魅力や開発ストーリーについて、スワン電器の西山さんにお話をお伺いしました。
目次
アブリ」とは?
このソケットの名前「アブリ」というのは、まさにバーナーで「炙る」ことから名づけられたそうです。しかしこの、ソケットを「炙る」という表現技法は、これまでのソケットでは見かけない新しい方法です。ではなぜ炙ることになったのでしょうか?その炙りの魅力とは何なのでしょうか?
炙りの魅力
「ステンレスを炙ると、虹色に光って金属独特の深い質感が出るんです。」という西山さん。
そして、「これまでの金属のエイジング加工というのは、錆を出すことが主流で、高級感やシンプルという方向性ものではなかったんです。そこで、新しいエイジングを模索していた時に出会った方法がこの炙りだったのです。」と話して下さいました。
「炙り」は加工に頼るのではなく、本物の持つ質感を引き出す方法だと言えそうです。実際にアブリソケットを手にとって見ると、シンプルでゴテゴテはしていないけれど、深みのある炙りのムラの具合が表情を作って、上品な印象を受けます。
電球に合う本物素材のソケットを
では、なぜこの新しいソケットを作るに至ったかというと、「もともとスワン電器のラインナップにある、美しい電球を活かすソケットがなかなか無かったから」という背景があったそうです。
その電球というのは、LEDでありながら本物の白熱電球のような美しさが特徴で(別記事でご紹介します!)、見た目ではLEDとはわからないほど。しかし、それに合わせるソケットは、一灯の鉄素材のものや、表面加工されたものが多く、せっかくの美しい電球を活かすにはどこか違うのではないかという思いがあり、、そこで、「本物素材を使ったソケット」を作ることになっていったそうです。
こだわったのは、「シンプルでありながらメッキや塗装ではなく、本物素材を使い、かつビンテージの質感がでるように」ということ。このようにして、本物ならではの質感が感じられるソケットが作られました。
使用時に、シンプルに見えるということ
このソケットはシンプルなフォルムに独特のアブリ質感が特徴です。注目したいのは、ボディがシンプルなだけでなく電球とセットして、家に取り付けた時にシンプルに見えるように設計されたとうことです。
デザインのポイントをお伺いすると、「フォルムはできるだけシンプルにしました。シンプルですが、下からのぞいたときにソケット部が見えないように寸法を綿密に調整したデザインにしています。それにより、実際の利用シーンで必要最低限の『電球、金属、コード』のみが見える状態になります。」
ソケットそのものだけでなく、「使うときにシンプルに見えるように」というところまで描いてデザインされていることが、この洗練された「シンプル」を作り出しているのですね。
確かに、電球まわりというのは、なんだかわからないけどどこかスッキリしていない、というような印象の時があります。そんな違和感もこのデザインに活かされているようです。
デザイン開発のヒントは現場にあり
アブリの開発について、西山さんは、「この企画を考えている時に、シンプルな製品作りには大きさや形以上に質感が大切だと感じていました」と言います。そこで、実際に工場へ向い、金属の種類や加工方法を見学したそうです。
「このアブリソケットは埼玉県吉川市にある工場で加工しています。この工場は自動車のフェンダーなど、人がすっぽり入る大きさの加工品を作っている工場です。そこに訪問した際に、ヘラ絞り加工の工程で行う焼きなましという加工があり、素材をバーナーで炙る工程があります。その加工を見たときに感動し、その質感を表現する方法を考えて企画した製品になります。」
中間工程である炙りの作業で金属が虹色に光る様子が、開発のヒントになったということです。
この「中間工程の炙りの状態が完成形」というのも斬新なアイデアで、工場の職人方は驚かれたそう。通常は、炙り工程の後にも工程があり、美しく仕上げて世の中に出すもの。そういった常識にとらわれない発想から、この新しいソケットデザインが生まれたということです。
本物志向
本物を追求する姿勢はソケットの質感だけではなく、細かい部分にもこだわっています。ソケットの上にある真鍮のギザギザとしたネジ部分です。
「もとの新しいネジのままだと、ピカピカと真新しい感じが出て全体として浮いてしまうのでエイジング加工をしています。大きいロールにネジと酸を入れて、ガラガラと回して表面を荒らす加工です。」
そうすることによって、自然な風合いが出て、ソケットとの連帯感が良くなり全体としての調和が取れるそうです。
加工と言っても、表面をメッキや塗装などで加工するのではなく、本物を活かすエイジングというところがポイント。無垢の木などとの相性も良くなるので、木の空間に使う時にもより馴染みがよく、素敵に演出できるそうです。
シンプルなのに、どことなく存在感
ユーザーの皆さんからは、シンプルなのにどことなく存在感があっていい、ただのシンプルじゃないところがいい、というお声が多いそうです。
実際の製品も、見た目以上にずっしりと、重みのあるものになっています。
これまでのシンプルなソケットと言えば、白・黒・メッキ・真鍮といった質感よりもとにかくシンプルというものだったので、質感も感じられるソケットの新鮮さは、特に、インテリア専門店やデザイナー、バイヤーなどから評価されているそう。一見シンプルだけど、どこにもハマらない存在感があることが、インテリアのプロの方々から見ても斬新なのだと言えそうです。
「何か違う」が良い
「ユーザーさんはそこまで見ていないかもしれないのですが、デザインを細かいところまでこだわると『何なのかはわからないけど、なんかいいね』につながると思うんです」と、西山さん。
その「何かいいね」が好みの空間を仕上げたり、居心地の良さを作っていくのかもしれませんね。
オススメは多灯づかい
存在感があるので、もちろん一灯使いでも素敵なアブリソケット。さらには、場所によっては複数合わせて使うとより雰囲気が出てオススメとのこと。一般の家庭ではダイニングキッチンなどに合わせるシーンも多いそうです。
この他、オススメの使い方をお伺いしたところ、「ビンテージフィラメントLEDのビーコン(写真右下)、オーバル(写真左下)、ボール等をランダムに(写真上)使うと、本物素材での表現がさらに印象的になります」ということでした。
使うほどに味わい深く。家とともに歴史を刻む
本物素材なので、使っていくうちにだんだんと深みが増して、味が出てきます。シンプルだから、インテリアを変えても馴染みやすいのも特徴です。
家を購入したり、リノベーションをするタイミングで取り付ける。、そして家とともに年月が経って、同じように歴史を刻んでいく。
歴史を刻む、想いの詰まったソケットを使うことにより、家への愛着もより湧いていきそうですね。
まとめ
シンプルだからこそ、本物素材を活かすことにより存在感が出るという「アブリソケット」。
「全てを本物にする必要はないけれど、本物をバランスよく使うことで、空間との調和がとれてより心地よくなる」というお話も頂きました。
「本当に気に入った物を永く使いたい方」「味わいを楽しみたい方」「なんか違うけどなんかイイのが好きな方」、ショールームで実物を体感してみてはいかがでしょうか?