リノベのトレンド
2019.11.25
書院造りとは?和室の原理原則が詰まっています
「リビングはフローリングだけれど、和室は絶対にほしい!」
和室の人気は根強いものがあります。理由は畳敷きの部屋は多目的に使えて便利だからなのですが、ただ畳を敷いただけではカッコイイ和室にはなりません。必要なのは原理原則を守ること。和風住宅の出発点となった書院造を改めて意識してみましょう。
ここでは書院造のポイントをおさらいした後に、和室について詳しく見ていきます。ポイントをアレンジして取り入れれば、原理原則が守られたカッコイイ和室が完成するでしょう。
書院造で発見、快適に暮らす工夫
「書院造?そういえば歴史の授業で習ったなあ」
そんな人はぜひ思い出してほしいのですが、室町時代に登場した書院造(の部屋)にはいくつかのポイントがありました。
1. 畳敷き
2. 床の間・付書院
3. 天袋・地袋・違い棚
4. ふすま
以上は単なる歴史的な遺物ではありません。畳敷きでもわかる通り、書院造の要素は快適に暮らすための工夫にして、和室を成立させるエッセンスでもあるのです。これらを無視して和室を造ってしまうと単なる畳敷きの部屋にしかならない、居酒屋チェーンの座敷のような何とも珍妙なスペースになってしまうのです。
それでは、以上4つのポイントをくわしく見ていきましょう。そのものズバリではなくエッセンスとして取り入れれば、カッコイイ和室づくりに役立ちます。
1. 畳敷き
書院造以前は人が座るところのみに敷かれていた畳が、部屋中に敷き詰められるようになりました。肌触りがいい、香りがいい、畳は日本人なら誰でも心地よさを感じるものですし、そのまま横になれるというのも快適です。
ただ普通の畳では面白くないということで、よく取り入れられるのが琉球畳。半畳の大きさで正方形、目が細かく縁がないのがポイントです。イグサそのものではなく色が付いたカラー畳も面白いですね。ただ、やりすぎると和室ではなく謎スペースになってしまいがちですから注意が必要です。
2. 付書院・床の間
書院造=床の間と考えがちですが、典型的な書院造である「慈照寺東求堂同仁斎(最初の写真)」には床の間はありません。代わりに「付書院(つけしょいん)」と「明障子(あかりしょうじ)」がありますが、これらは和室作りの重要なポイントです。
付書院は造り付けの机、明障子は採光のための小窓。書き物をするための実用的な工夫です。それと同時に果たしているのがアイキャッチの役割。自然と視線をそこに向ける気持ちにさせる心理的工夫です。後の書院造では付書院と明障子が、床の間と掛け軸に置き換わりますが、これらが果たしているのもアイキャッチの役割ですね。
和室の魅力は家具を出したり布団を敷いたりすることで、リビングやベッドルームなど何通りもの使い方ができることです。そのかわりに部屋の中心となるものがありませんから、アイキャッチがないと何とも落ち着かない部屋になってしまいます。
最近の和室でも床の間的なスペースを設けて、間接照明で照らしたりしているのを見かけます。これは書院造の伝統から見ても大正解。上手くエッセンスを取り入れている例といえるでしょう。
3. 天袋・地袋・違い棚
書院造でよく床の間の横に造られるのが、上下の「天袋・地袋」に挟まれた「違い棚」です。これは収納スペース、今風にいうなら違い棚は「見せる収納」になるでしょう。床の間が奥にはいる分、出っ張った部分を収納に活かすのはスペースの有効活用例として参考になりますね。
4. ふすま
書院造が登場する前、貴族たちが暮らしていた寝殿造の住宅は、一つの建物に一間しかありませんでした。だだっ広い部屋を必要に応じて、屏風や絹製の几帳(きちょう)で囲ってそれぞれが暮らしていたのです。ふすまの登場は部屋という概念の登場でもあったのです。
加えてふすまが優秀なところは、外して複数の部屋をつなぐことで大広間にもなること。TPOにあわせて間取りを変えることができる工夫です。また、ドアの様に引き戸ではなく開き戸というのも優秀。開閉時にデッドスペースができませんから、限られたスペースを有効活用できるのです。ふすまは和室を造るなら、ぜひ取り入れたいものです。
書院造にならってもっと本格的な和室を目指すなら
他にも書院造から学ぶべき、和室のポイントはいくつかあります。床の間と違い棚の間に立つ「床柱」は空間を引き締める役割を果たしますし、漆喰(しっくい)を使った「塗壁」にすることで、壁紙では表現できない本格的な和室感を演出することができるでしょう。
注目を集めている珪藻土の塗り壁にすると、高い断熱性や吸湿性が期待できますし、仕上げ次第でモダンな印象になりそうです。
まとめ
さすが近代住宅の元になっているだけあって、書院造を参考にすべき点は多々あります。
今までにない斬新な和室を目指すのも良いですが、手本もなしにやってしまうと珍妙なものになりかねません。
やはり押さえるべきは原理原則。書院造にのっとっているかどうかを考えながら、オリジナリティを出していくことをおすすめします。