リノベのハウツー
2018.08.24
リノベーションQ&A ビギナーが抱える ギモンにお答えします!~2.資金計画~
目次
戸建てリノベーション初心者も安心!! RENOVATION Q&A
リノベーションといえばマンションが一般的ですが、最近では「戸建て+リノベ」を選ぶ人も増加中。
しかし、費用がかさむのではないか、中古物件の耐久性をどう見極めればいいのかなど、マンションと比べると不安な点も多いのではないでしょうか?
そこで、初心者が安心してコダテリノベに取り組めるように、プロの意見を交えながら、チェックポイントをQ&A形式で分かりやすく解説します!
第2章 資金計画
リノベーション(以下リノベ)費用にはローンが下りなかったひと昔前に比べると、今は一体型ローンや減税、補助金などの制度も整ってきました。
ただし、いろいろな条件があるので、正しい知識を身につけて、賢く活用しましょう。
Q6 予算はどれぐらいかかる?
A.自己資金は物件価格の1割では不十分
ハコの中身だけで共用部のサッシなどは変えられないマンションと比べると、戸建ては構造、屋根や外壁、外構など、全体にお金がかかるため、工事費がかさむのは当然です。
また、個々の住宅の状態によっても費用は大きく変わるため、なかなか坪単価では表しにくいとA&Cのコーディネーター、岡本典子さんは語ります。
それでもしいて目安を挙げるなら、延床面積80平米の住宅の場合で、構造は触らず、仕上げ材と設備の交換だけで最低1,200万円、床・壁・天井をはがして下地からやり直したり、階段の掛け替え、吹き抜けの新設など、大がかりな間取り変更が伴うと最低1,500万円はかかるそう。
さらに、外壁塗装や屋根の葺き替えが加わると200万~300万円は上乗せになります。
Q8で後述するように、今は物件購入とリノベ費用をセットで借りられるローンも増えているので、全額借りることも不可能ではありませんが、特に中古住宅購入の際には、物件代の3%余りも取られる仲介手数料をはじめ、所有権を移転するために払う税金や司法書士への報酬などの諸費用が意外にかかります。
これにローンにまつわる諸費用を加え、引っ越し代や家具・家電の購入費も想定すると、物件価格の1割は必要になる勘定です。
しかも、戸建てのリノベの場合は、これだけでも不十分だと岡本さん。
「購入前は表からの目視しかできないため、内装をはがして初めて、シロアリ被害や、浴室回りの柱が腐っているといった傷みが見つかることはよくあります。そういう不測の事態に備えて、自己資金は物件価格の1割+50万~100万円意しておきたいですね」
Q7 リノベでもローンは組める?
A.物件購入+リノベ費用が一体のローンも。ただし周到な準備を!
新築とほぼ同じ条件で、物件購入とリノベの費用をまとめて借りられる、一体型の住宅ローンが登場して10余年。
今では取り扱う銀行も増えてきました。しかし、案外知られていないのが、その仕組み
リノベ費用も同時に借りるためには当然、だいたいの金額が分かっていなければなりません。
ローンの仮審査時には工事の見積書やリノベ後の平面図の提出が求められます。
物件購入の申し込みから売買契約までには約1週間しかないため、申し込み後にリフォーム会社や建築家に依頼したのでは到底間に合わないのです。
A&Cの岡本さんによれば、ローン仮審査時に提出した図面どおりに完成させなければならないという決まりはないので、工事請負契約まではプラン変更は可能出そうとです。
しかし、一度借り入れ額を設定してしまうと、あとで増やすことはできないため、やはりどんなリノベがしたいか、それにはどれぐらい費用がかかるかは業者とよく相談しておく必要があるといいます。
つまり、物件より先に設計者選びを進めたほうが、見学にも同行してもらえて、一石二鳥というわけです。
Q8 減税や補助金など、お得な制度はある?
A.住宅ローン減税や補助金については、諸条件があるのでよく調べよう
よく耳にする「住宅ローン減税」とは、10年間にわたって毎年、年末ローン残高の1%が所得税から控除される制度のこと。
中古物件購入やリノベ工事費も対象になりますが、それぞれ条件があるので、要注意なのです。
物件については、延床面積50平米以上、ローン返済期間10年以上、年間所得3,000万円以下に加え、中古の木造住宅の場合は築20年以内であるか、一定の耐震基準に適合しなければなりません。
また、工事費は100万円以上であることが条件。
A&Cでは築20年超の戸建てリノベを行う人が大半なので、もっぱらリノベ工事費のみの控除を受ける人が多いそうです。
耐震、バリアフリー、省エネに特化した改修については、税の優遇があるだけでなく、国や自治体が多様な補助金を用意しています。
費用をかけてでもそうした面に力を入れたリノベをしたい人は、事前に情報を集めておくといいでしょう。
総論
リノベなら身の丈に合った個性的な家が手に入る! 戸建てならではの縦の空間を遊び尽くそう!
リノベ界のパイオニアとして知られるアートアンドクラフトを率いる中谷ノボルさんに、中古住宅+リノベを選択する人が増えてきた背景や、戸建てを中心にしたリノベの魅力について語っていただきました。
19年前、中古マンションの一室を全面リノベして売り出す事業を始めた中谷さん。当時は物珍しがられたリノベがここまで普及した現状について、こう語る。
「僕はよく、住宅もようやく『民主化』してきたんだと言っています。
高度成長期に大量に建設された団地にはじまり、以前はマンションや建売住宅のような完成品を買うしかなかった。
そんな中、もっと自由に手頃な値段で、自分の好みやライフスタイルに合った家を手に入れたいという人が増え、中古住宅をリノベするという選択肢が一本の太い柱として成長してきたんだと思います」
古着やアンティーク、懐しい音楽にも魅力を感じ、新しいものと古いもが混在した空間に違和感を持たない若い世代にとって、日本はいってみれば宝の山。
築20年もたてば家の価値はほぼなくなり、土地だけの値段でタダで古家がついてくる。
こんなに中古住宅がお買い得な国は、海外にはないと中谷さんは言う。
マンションと比べて、戸建てリノベならではの魅力とは何だろうか。
「高さを生かして立体的につくれるところですね。吹き抜けをつくったり、屋根の勾配をそのまま表したり、あえて高いところに天窓や高窓をあけて光を落としたりすると、おもしろい空間になります」
万一、間取り変更ができないなど、見込みはずれの古家を買ってしまったらどうすればいいのかと問うと、こんな答えが返ってきた。
「そこをなんとかするのが設計者の仕事ですし、悪条件を逆手に取ったほうが、かえっておもしろい家ができる可能性もあります。
特に戸建てのリノベを選ぶ人には、そういう予想外の事態も一緒に楽しめるぐらいの余裕が必要かもしれません」
こちらは、アートアンドクラフトが手掛けた大阪・梅田からほど近い沿線の駅前商店街沿いにある住宅。
画像左:Before)
街と密接する1階の土間から2階へ上がると、天井高5mの明るく開放的な大空間が出現。
画像右:After)
基礎や骨組みから全面リノベすることで、縦につながった木造戸建てのおもしろさを存分に生かしつつ、古い家の名残もほどよく感じられる住まいへと一変した。
(伊藤ハムスター= 扉・人物イラスト、安田はつね= 建物イラスト、アートアンドクラフト/中谷ノボル・枇杷健一・岡本典子= 取材協力)
(住まいの設計2017年1・2月号より)