今日の季節
日本には、1年を4に分けた四季があります。
さらに24に分けた二十四節気があり、さらに72に分けた七十二候があります。ほぼ5日周期で季節は移ろいでいるのです。
その変化に私たちは気づかずに生きているのかもしれません。
ところが身体と心はそのかすかな変化を感じとり、気づかぬうちにその環境の変化に対応してくれています。
二十四節気と七十二候に心を寄せる時間。
ほんの少し、いかがですか。
2017年11月2日〜11月6日 楓蔦黄なり(もみじつたきなり)
紅葉(もみじ)や蔦が色づく頃です。
楓の別称が“紅葉(もみじ)”です。
日本を代表する楓は“イロハモミジ”と呼ばれるものです。
この季節の養生
漢方の考え方に“邪気(じゃき)”というものがあります。
これは病気の原因とされるもののことです。
まずはざっくりと、四季+梅雨の5つの季節に代表される邪気をご紹介です。
・春=風邪(ふうじゃ)
・梅雨=湿邪(しつじゃ)
・夏=暑邪(しょじゃ)*蒸し暑さのある日本の夏は湿邪の影響も小さくはありません。また、夏の邪気として火邪(かじゃ)というものもあります。湿度は伴わない猛暑の時に現れます。空気がカラッとした暑さの国で真夏に山火事が起きなかなか鎮火されずに燃え続けているといったニュースを聞くこともありますが、このような気候は火邪と考えられます。
・秋=燥邪(そうじゃ)
・冬=寒邪(かんじゃ)
今の季節は秋ですので空気の乾燥、つまり“燥邪”に最も影響を受けやすい時期です。
もう少し細かく分ければ、夏に近い秋は夏の影響を受けています。ですので、調子の悪いときは燥邪に加え暑邪や湿邪も原因として考えられます。
今は、立冬間近の晩秋です。
ですので、燥邪に加えて寒邪も体調不良の原因と考えられます。
逆に、冬も空気は乾燥していますので寒邪だけでなく燥邪の影響も考慮する症状もあります。
今回は難しい聞き慣れない言葉が続いているかと思いますが、このまま1つ、今の季節に現れやすい症状を見てみましょう。
<燥邪犯肺証(そうじゃはんはいしょう)>
体内への燥邪の侵入により現れる肺の症候群です。
—症状—
空咳、鼻・唇・皮膚の乾燥、喉が渇く、発熱、軽い悪寒、胸痛、喀血
—考えられる原因—
・空咳、胸痛、喀血→燥邪が津液(体内の水分)を消耗し肺が潤っていない
・胸痛、喀血→温燥の乾燥
・鼻・唇・皮膚の乾燥、喉の渇き→津液不足で皮膚や体毛を滋養できていない
・発熱、軽い悪寒→涼燥の乾燥
—薬膳での対処法—
内蔵など体の奥でなく、表面など浅い部分に症状が出ている状態です。
ですので、解表(げひょう)といって汗をかかせて邪気を外に追い出す作用のある食材と、潤燥(じゅんそう)といって乾燥を滋養する食材を使用します。
たけのこ、のり、昆布、くらげ、梨、枇杷、鴨肉、卵、牛乳、葛粉、菊花、薄荷などを、体の様子をみながら摂るようにしてみてください。
この季節のまめ知識
紅葉(こうよう)の季節に入って来る頃ですね。
“こうよう”と同じ漢字なのが“もみじ”です。
この語源は、草木が赤や黄色に変化することを「紅葉つ(もみつ)」「黄葉つ(もみつ)」といい、その葉のことは「もみち」と呼んだところにあるそうです。
この時期の季語もやはり紅葉(こうよう)を表現したものがあるのでご紹介いたします。
・照葉(てりは)・・・紅葉が日の光に明るく映えている様子
・山装う/山飾る(やまよそう/やまかざる)・・・紅葉に彩られた秋の山のこと
この季節に楽しみたい文様
和服の絵柄には四季を感じさせる自然界のものを表されたものが数多くありますよね。その柄というのは旬を迎える少し前から身にまとうのが粋と言われています。
今の季節の文様には“蔦(つた)”と“吹き寄せ”があります。
蔦は9月〜12月、吹き寄せは11月〜12月に楽しみます。
蔦は、木や壁をつたってどんどんと伸びていく様から繁殖・繁栄・生命力が強いことから縁起が良いとされる柄です。
吹き寄せは、様々な落ち葉が風に吹き寄せられている様子を描いた柄です。秋の終わりを表しています。
参考文献
・『日本人が大切にしたいうつくしい暮らし』井戸理恵子/かんき出版
・『日本の七十二候を楽しむ〜旧暦のある暮らし〜』白井明大/東邦出版
・『大切にしたいにほんのたしなみ』広田千悦子/Softbank Creative
・『和の暦』堀川波/朝日新聞出版
・『性味表大辞典』竹内郁子/青雲社
・『中医薬膳学』辰巳洋/東洋学術出版
・『実用中医学』辰巳洋/源草社"